不安症(不安障害)不安・心配で世の中生きづらいと感じている方へ

不安症(不安障害)不安・心配で世の中生きづらいと感じている方へ

不安症(不安障害)とは、対象がハッキリしない漠然とした不安や緊張によって、ソワソワする、落ち着かない、力が入らない、動悸や手の震え・発汗などの身体的症状を伴ったり、良くないことばかりが頭をめぐる、怖くなる、焦る、混乱する、些細なことが気になるなどの症状が伴うことがある、不安や心配から始まる心の病気です。
病気に切り替わる基準は「社会生活に支障をきたしているか」どうかです。

不安症(不安障害)とは

不安・心配の感情が強くなってしまう事により、日常生活や社会生活に支障が出てしまう事や、人間関係に支障を来してしまう事を、不安症(不安障害)と言います。不安症(不安障害)は以前はノイロ-ゼ、その後不安神経症と変わり、大きい括りで不安症(不安障害)となりました。

不安を感じる場面は日常生活や社会生活の中で沢山あります。どのような場面で不安の症状が強く出るのか、また支障されている社会生活・日常生活はどういう面なのかに応じて、不安症(不安障害)にもいくつかの分類に分けられます。

また、不安症(不安障害)になりやすい方は、元々神経質であったり不安性であったりなどの性格を持たれている方も多く、うつ病など、他の精神疾患との併存が多いことが知られています。そのため、自身ではうつ病だと思って病院へ行く患者さんが多く、うつ病と間違えられやすい病気の1つでもあります。

不安症(不安障害)とは

不安症(不安障害)
専門医による解説

不安症(不安障害)とうつ病の違いとは? 実際の不安症診療では何をされるの?!
今回は、実際の医療の現場において不安症(不安障害)やうつ病の治療や両者の違いなど一般的にはわかりにくいポイントを黄先生に聞いてみました。


不安症(不安障害)の
診断ポイント

不安症(不安障害)は様々な種類がありますが、明確な診断ポイントはあるのでしょうか?

不安の感覚そのものは人にとって危険なリスクや失敗を避ける為に元々必要な大切な能力ですが、その思いがことのほか強すぎ暴走した状態になって、自身や周囲の者の日常生活や社会生活に大きな支障をきたしていると判断される場合に不安症(不安障害)と診断します。不安症状が暴走していて障害のレベルにあり治療が必要な状態なのか、本来の日常に必要な不安心理としての範囲内なのかまず診断する必要があります。

ただし、不安症状が強すぎる場合であっても、それが不安症によるものなのか、それとも他の精神の病から来るものなのかはしっかり鑑別する事が大切です。それによって対処が大きく違ってきます。その鑑別にはしっかりとした知識と経験が必要でしょう。

不安症(不安障害)の診断ポイント


不安症(不安障害)の種類

不安症(不安障害)には一般的にどのような種類があるのでしょうか?

様々ある不安症(不安障害)の種類については、現在ではその症状に基づいて医学的に主流となっている国際的な分類方法として米国のDSMと欧州のICDという診断の基準、指標があります。それらの基準に少々の差異もありますがICD-10の基準で診断しますと大きな分類として、次のような種類があります。

  • 「恐怖症」
    本来危険ではない特定の物や事象、体験に対する不安が耐えられないほど強いもの。その中でも特に対人関係の場面でことさらに緊張し、あがってしまうことを「社会恐怖症」と呼ぶ。

  • 「全般性不安障害(GAD)」
    対象がハッキリしない漠然とした不安が続き、絶えずイライラする、そわそわする、落ち着かない、生き辛い状態が続く。

  • 「パニック障害」
    理由なく急に耐えられない強烈な不安に襲われる。

  • 「強迫性障害」
    不合理かとわかっていても強いこだわりをやめられない。

  • 「急性ストレス反応」「適応障害」
    身に起こったストレスに耐えられず、強く落ち込んだうつ状態となる。

  • 「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」
    通常あり得ない強烈な恐怖体験が脳の記憶に残って固定してしまい、理由なく急にその恐怖記憶が襲ってくる。

  • 「解離性、転換性障害」
    一時的な精神的ショックがあまりに大きすぎて、本人の精神が受けきれずに起こった事実から無意識に逃げる為にその事象に関連する記憶を失ったり、身体機能を失ったりする。

  • 「身体表現性障害」
    医学的に説明できる身体疾患は見つからないけれども、苦痛を伴う身体の不調が続いてしまう。

このように、大別しても不安症には様々な診断名の分類があり、それを更に細分化してどのタイプの診断名が最も今の症状、状況に近いのかに応じて不安症の診療をします。


不安症(不安障害)の診断

こうしてみても不安症(不安障害)の種類がたくさんあって診断も難しそうですね。

多岐に渡りオーバーラップする事もある複雑な心の状態を診断する訳ですので、不安症の場合は何かの症状だけをもって決定的にどの分類にあたる不安症だと明確に診断、分類するような指標はありません。複数の指標から当てはまる症状、その数や程度、苦痛の変遷をみながら焦らずに診療をしながら診断します。診療経過から診断名が途中からより適切なものへ変わる事もあります。


不安症(不安障害)の治療

実際の不安症臨床の現場ではどういった治療が行われるのでしょうか?

医療での不安症(不安障害)の治療は大きく分けて、不安を減らすお薬を服用してもらう薬物療法と、面談して会話や学習、体験によって症状の軽減、回復を図る精神療法があります。よく耳にするカウンセリングというのも精神療法の一つですが、一言でカウンセリングと言ってもその手法にもいろいろあります。

精神療法は心理療法とも呼ばれ、現在の日本の臨床現場では系統立って時間をかける手法の精神療法は精神科医師よりも心理士や作業療法士、カウンセラーと呼ばれる職種が関わる事がほとんどです。公認心理士と作業療法士は精神障害の回復やリハビリの精神療法をする国家資格です。

不安症(不安障害)の治療

薬物療法と精神療法があるのですね。不安症の診療ではどのように治療を進めていくのですか?

実際の不安症の診療現場では、精神科医は限られた診療時間の中でなるべく診断を見極めて、見合った薬物療法での苦痛の軽減をまず図ります。面談は患者さんの状態の把握と精神療法のエッセンスとなり、お薬と症状把握の会話を通じて患者さんの自己治癒力も見ながら回復を焦らずに見守ります。

医師の外来診療の他に心理士等の治療者が精神療法を併用する場合もあります。よく精神科医自身が診療でカウンセリングや話を良く聞いてくれるものと考えている人も多いですが、必要な全体状況を把握する初診を除いては現在の日本の臨床現場では精神科医自身が多くの時間会話したり、本格的な精神療法を外来診療中にしたりする事はなく、期待と違っていたとがっかりされる方もいます。

なるほど、一般の方は精神療法をすると思っている方も多いと思いますが、実際には薬物療法が中心なのですね。薬物療法や精神療法にはそれぞれどんな副作用がありますか?

確かに保険診療制度で多数の患者様を診療する一般外来では、系統だった長時間の精神療法はできませんが、例えば十分程度の面接でも患者様の状態把握のみでなく、たわいないような会話の中で小精神療法などと言われる精神療法もしています。短時間の診療なので薬物療法が中心に思える場合でもやはり面談による精神療法と薬物療法は治療の両輪です。薬物療法は不安症(不安障害)が脳の機能変調を介しているとの医学的立場からその補正をするものです。

副作用としては、その薬物治療中の心身の変化自体にご本人自身が当初違和感を覚える場合や、それこそそれが余計な不安を誘発して不安の悪化、より不安定な心理状態になる事があります。また、稀ですがやはりどんな種類のお薬でも個人的な体質と相まって体内各臓器での代謝反応やアレルギーによって身体不調となり得る副作用があります。

精神療法では、その療法に熟練していない治療者が不用意にやると、逆にそれまでなかった症状まで誘発してしまい、より悪化させる事があります。またどうしても人間同士の相性による効果の差もあるでしょう。これらの治療による副作用は一過性であったり、必要な反応であったりして経過の様子を見ながら続けてしかるべきものから、時には中止が必要になる重いものまでありますので、治療を受けている時点で、何か不調を感じたら、遠慮せずに申し出る事が大切です。


不安症(不安障害)が悪化するとどうなるか?

不調を感じたら正直に先生に伝えることが大切なのですね。不安症(不安障害)が悪化していくとどうなるのでしょうか?

不安症(不安障害)と診断されるくらいの時には既に日常や社会生活で自分や他人に大きな弊害を及ぼしている状態と考えられます。そういう時に我慢して放置していると往々にして不安症状は環境と相まり、より悪循環となって複雑にどんどん辛い状況になっていきます。

不安が強くなると、焦燥(しょうそう)という、炙られているような焦り感、そわそわと居ても立ってもいられない状態となったり、動悸、頻脈や身体の震え、心の過緊張、強い筋緊張による肩こりや腰痛、頭痛、腹痛といった身体症状を呈する様にもなりますし、めまい、発汗、呼吸困難感や転倒、失神など多彩な自律神経の不調を伴う事にも繋がります。更に酷くなると実際に胃潰瘍や心疾患、脳疾患などの物理的な身体疾患に移行する場合もあります。強い不安がそのまま続くとその後には高確率でうつを併発する事が知られています。

不安症(不安障害)が悪化するとどうなるか?

放っておくと大変なのですね。不調を感じたら早めに受診するのが良いということですね。実際には不安症なのにうつ病かなと思って来る患者さんが多いと聞きました。

一言でうつと言いましてもそれ自体も複雑なものなのですが、うつという疾患名は今では良く知られていて、それに比べて不安症はあまり認知されていない事もあり、まずうつではないかと疑って受診される人が増えています。

受診される方は、「疲れやすい」「よく眠れない」「物事に集中できない」「今後が不安」「喜びの喪失」などを訴えて、うつを念頭にして受診されます。確かにこれらの症状はうつにもまた不安症にも見られる症状です。またうつと不安症は高い率で併発しますので、うつと不安は二人連れなどとも言われます。


不安症(不安障害)の
自己診断チェック

自身である程度の自己診断チェックをする方法などはあるのでしょうか?

自分はうつなのか、不安症なのか、またその二つの見極めも簡単とは言えません。併発している場合は、どちらがまず優勢なのかをよく判断する必要があります。それぞれに用意された特徴的な病状に関連する複数の質問事項に答えて貰ってその回答の点数化を行った結果から診断を判断する事もあります。

それでも、ある程度、とりあえず簡単に自己チェックするのであれば、うつの場合は生きるエネルギー自体の枯渇という面が大きく、普段より「活気がない」「行動が億劫」「何事にも興味や欲求が沸かない」「身体が重い」といった症状はうつの側面を強く疑わせます。

また、うつの場合は日内変動という、朝方に調子が悪く、夜になるにつれ症状が軽くなる事が多く、不安症の場合は「不安感が強い」「どうも生き辛い」「疲れやすい」「集中できない」といったうつのような症状があってもそれは一日の中での時間帯による症状変化はほとんどありません。例えば予期しない時に急に理由なく耐えられない不安と身体症状の発作を起こすパニック障害も不安障害の一つですが、やはり日中の時間帯とは関係しない事がほとんどです。

不安症(不安障害)の自己診断チェック


不安症(不安障害)の
よくある質問

患者さんが特に気にされていることやよく聞かれる質問はありますか?

うつと思われる患者さんからは、「やる気が起きない」「人間関係や置かれている環境下での不調や苦痛」「不眠」「身体が鉛のように重い」「食欲がない」などの訴えが多く、どうすればこの苦しさが改善できるか聞かれる事が多いです。

一方、不安症と思われる患者さんが来院される場合は「急に耐えられない不安に襲われる」「とにかく落ち着かない」「特定の物や出来事が恐い」「頭では必要ないと薄々わかっていても行動しないと気が済まない」などの訴えです。不安症の場合は、ご本人でなく同伴者が「こだわりが強すぎて変ではないか」「心配症過ぎるのではないか」と気にして連れて来られる場合やご本人の周囲の者に受診を促されて来院される事があります。それで本人や周囲の者が苦痛や日常生活上の困難を伴っているので、やはりその軽減、改善方法を求めて受診されます。


不安症(不安障害)の最新治療

最新の治療として、今後どういった治療法が出てくる可能性があるのでしょうか?

不安症(不安障害)に対して、薬物療法では現在は不安を速やかに直接解消させる効果のある抗不安薬と、脳内の機能変調を少しずつ整えた状態にしようとする抗うつ剤が主に使われています。

これらの薬も日々開発が続けられて進化しており、より個々人の症状や体質に合致した薬が出て選択されるようになり、同じ効果でもより身体に合った、今までよりも副作用の少ない薬が引き続き開発されていくと思います。

また既に欧米など外国では治療薬として効果が立証されて処方されていても、日本国内では同じ不安症(不安障害)での治療薬としてまだ認可されていない薬が、今後日本でも治験などで効果が証明されて処方の選択枝が増える可能性は高いのではないでしょうか。

続々と良い新薬が開発されているのですね。

はい。更にこれらの主な2種類の治療薬以外に、最近では脳機能の補正を薬理的に研究されていく中で、抗精神病薬と呼ばれる別の機序の脳機能調整薬や、発作突発的な不安症状を抑えるのに抗てんかん薬の効果なども実証されてきており、症状を医師と相談しながら服用している方も増えています。薬物療法も日進月歩である事は間違いありません。

精神療法では新しい試みとして、どのようなものがあるのでしょうか?

精神療法では、今までは、心因といわれる過去の経験や本人の性格などから不安が昂じてしまった原因を分析して、本人さえも自覚してない心の葛藤の存在を明らかにし、その解消を図る治療が主流でした。

最近では、原因探しを一旦置いておいて、実際に今そこにある苦悩症状を理解し、不安があってもそのまま行動してみる事により不安と共存していく手法の精神療法の効果が証明されています。原因には拘らないままに、今とらわれすぎている過剰な考えや偏った視点、感覚の状況を客観的な気づきをもって、その排除をしようと抗わずにあるがままに受け入れて前向きに考えるような精神療法です。

精神療法でも新しい試みがされているのですね。

はい。精神療法には個人や集団、能動的や受動的なものまで多くの種類のがあり、よりその人に合うよう、効果的になるように工夫され続けています。不安症(不安障害)では例えば認知行動療法という手法の効果が注目されその治療者も増えていますが、この認知行動療法自体も第一世代、第二世代、第三世代などと多様化しており、今後もより進化していくでしょう。もちろんこれまで用いられてきた、環境を含めてストレスや不安の原因自体を考えてそれによる心の葛藤を少なくする考えに基づく、従来からの精神療法も効果があります。

かつてないほど社会環境の著しい変化に置かれていると考えられる現代社会に於いて、それに呼応して人々のメンタルの不調和も各々変遷していますので、今後も自ずとその対処、治療法も新たに開発されていくものと思います。

現代のストレス社会において医療も様々な対処や苦労をされていることや新しい治療法も日々進化していることがよくわかりました。黄先生、大変貴重なお話をありがとうございました。

こちらこそありがとうございました。

監修医 黄 舜範先生

医学博士/湘南医療大学 精神医学 臨床教授/日本医科大学 精神科 非常勤講師/精神神経学会専門医・指導医

治験という選択肢

新しいお薬の候補やその治療法が、病気に対して「どのくらい効果があるか」「安全であるか」について、人を対象に調べることを臨床試験(治験)と言います。

すでに医療機関に通院して治療を行っている方のための治験や、まだ診断は受けていないけれど症状を感じている方のための治験など、様々な治験が行われており、「生活向上WEB」では、治験を探している方に募集情報をお届けしています。

今後、不安や緊張を日常的に感じる方(不安症である可能性がある方)を対象とした治験のご案内を予定しております。
症状にお心当たりがございましたら、アンケート回答・ご連絡先情報の登録をお願いいたします。治験の募集が開始された際に、ご案内させていただきます。

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