2018年の国勢調査によると、現在の日本の人口は約1億2650万人です。
2030年には約1億1600万人、さらに今から30年後の2048年には1億人を下回ると予測されています。
今、日本の人口は減少傾向であるにも関わらず高齢化はどんどん進んでいて、2030年には65歳以上が3人に1人になると言われています。
日本の社会保障制度(年金、医療、介護)は若い世代が税金や保険料を払うことで高齢者を支える制度ですが、日本の若い世代である生産年齢人口(15〜64歳までの人口)は1995年の8700万人をピークに減少しています。
生産年齢人口が減少するということは税金や保険料を納める人口が減り、社会保障制度を保てなくなるということを意味しています。
生産年齢人口の減少と同様に高齢者も減った場合には問題は起こりませんが、医療の発達により人はどんどん長生きするようになっているために高齢者は増え続けています。
1950年頃では約12人の生産年齢人口が1人の高齢者を支えていましたが、2017年時点では2.2人まで下がっており、さらに2048年には1.4人にまで減少すると予想されています。
医療・介護費用に関しては、高齢者になると段違いに多くなってきます。
医療費は、全国民の平均は年間30万円程度でですが、70歳で80万円、80歳になると90万円まで跳ね上がります。
さらに介護が必要になる人の割合は、65歳では3%程度ですが、75歳を過ぎると15%に上がり、80歳で30%、90歳で70%になります。
膨れ上がる医療費や介護など、高齢化社会では様々な問題があり、若者だけで高齢者を支えるには限界がきています。
今は昔と比較して元気で活動的な高齢者が増えており、最新の科学データによると「現在の高齢者は10~20年前に比べて、5~10歳は若返っていると想定される」となっています。
これからの時代はできるだけ長く働くことや、日常生活を支障なく過ごせる期間である健康寿命を延ばし、医療・介護にかかる費用を抑えることがに大切になります。
そのためには高齢者自身ができるだけ病気にならないように、寝たきりや介護が必要にならないようにいかに病気を予防するかが重要になってきます。
高齢者と病気
「歳をとったら病気にかかりやすくなり、病気が治りにくくなる」と言われます。
厚生労働省が発表しているデータによると、実際に病院に来ている患者さんの中で、65歳以上の比率は外来では約5割を、入院では約7割を占めていて、病院に通う回数も多くなっています。
また、同じ病気でも、年齢が高くなると治りにくくなるものがあり、例えば脳血管疾患では他の年齢では50日以下で退院しているのに対し、65歳以上では100日以上も入院しています。
慢性腎不全や気分障害などの病気や骨折などのケガでも年齢が上がるにつれて入院日数が長くなっており、治るのに時間がかかっていることがわかります。
さらにアルツハイマー病のように、高齢者だけがかかる病気もあります。
高齢者の死亡原因は1位 がん、2位 心疾患、3位 脳血管疾患となっています。
また、介護原因は1位 脳血管疾患、2位 認知症、3位 高齢による衰弱、4位 骨折、転倒となっています。
がんや心疾患、脳血管疾患などは生活習慣病が関係していることが多く、現代社会では長生きすることで生活習慣病になる可能性が上がります。
生活習慣病は、偏った食事や喫煙、飲酒、運動不足、睡眠不足、過労、ストレスなどが原因であると言われています。
病気を予測する最新技術
最新技術により未病をあぶり出し、健康維持に役立てようとする試みが始まっています。
未病とは、まだ病気ではないけどこのまま放置しておくと病気になるという、病気リスクが高い状態を指します。
未病を発見する最新技術
指の血流から自律神経の状態を分析して隠れた体の不調を見つけだしたり、健康診断のビッグデータから3年後の健康リスクを予測したりするなど様々な手法が登場しています。
指先から脈拍の動きをグラフ化した脈波と心電波を読み取ることにより、交感神経と副交感神経のバランスを分析し自律神経機能を可視化することで、例えば自律神経機能が基準値より低かったり、交感神経優位の過緊張状態を示していたりすると、本人に自覚がなくても疲労やストレスをため込んでいる可能性があるという判断ができます。
また、自律神経は体の状態を如実に表すため、定期的に測定することで、高齢者のうつや過労死、生活習慣病など未来のリスクを見つけ出すことが可能になると期待されています。
また、わずかな量の血液検査で13種類のがんを診断できたり、1滴の血液からアルツハイマー病の原因物質を検出できる最新の技術も出てきています。
日本人の最も多い死因であるがんは、発見が早ければ早いほど治療の可能性が高くなり、治癒率は上がります。
現在のがん検診は、それぞれのがんによって異なる種類の検査を受ける必要があるうえに、患者さんにとって負担が大きく、中には痛みや精神的な苦痛を伴う検査もあります。
新しく期待されているがん検査は、血液の中を流れる「マイクロRNA」と呼ばれる物質を調べることにより体の中にどんな種類のがん細胞が潜んでいるかを早期に突き止めることができます。
マイクロRNAとは、血液や唾液、尿などの体液に含まれる22塩基程度の小さなRNAのことで、最新の研究によって、がんのタイプにより放出するマイクロRNAの量や種類が異なることがわかっています。
この最新の血液検査によるがん診断はまだ試験段階ですが、わずかな量の血液を採るだけで胃がんや乳がんといった患者数の多いがんの診断だけではなく、大腸がん、胃がん、肺がん、乳がん、前立腺がん、食道がん、肝臓がん、胆道がん、すい臓がん、卵巣がん、膀胱がん、肉腫、神経膠腫といった希少なものを含む13種類のがんを、ごく初期の段階で診断が可能になる検査技術です。
また、アルツハイマー型認知症診断も開発されており、これは血液を用いてアルツハイマー型認知症と関係の深い物質が脳にたまっているかどうかを質量分析により見つける方法です。
この最新の質量分析技術を使えば0.5ccの血液でアルツハイマー型認知症の原因物質を検出することができます。
アルツハイマー型認知症の原因物質は、脳に集積するアミロイドβという物質です。
脳の中でアミロイドβの集積が始まっても、約25年間は症状は全く現れず無自覚です。
人知れず密かにアミロイドβが脳に溜まっていくため、自覚症状が現れた時にはかなり進行していて、すでに治療が難しい場合が多く、その後約10年間で急速に認知症が進行して死に至ります。
2025年には高齢者の5人に1人が認知症になると推測されているため、アルツハイマー型認知症の発症前診断、つまりアミロイドβが脳に集積し始めたことが早い段階でわかれば、早期治療が可能になり、症状が出る前に様々な取り組みができ、対策が成功すれば認知症を予防することも可能になるかもしれないと期待されています。
未病や病気の早期発見が可能になる最新技術はあと数年で実用化されるものもあり、多くの期待が寄せられています。
最新技術により未病の早期発見、早期治療が可能になれば、結果として今後増加の一途を辿るであろう医療費の軽減や将来の不安を少しでも取り除くことができます。
このような時代だからこそ一人一人が健康管理、自己予防を心がけ「自分の身体は自分で守る」という考え方が必要になってきます。
できるだけ健康寿命を長くして寿命を全うするためには病気を予防し、健康で自立した高齢者が増えることが望まれます。