薬局に行くといつも丁寧にお薬について指導してくれる薬剤師さん。
近年、薬剤師は薬学全般の知識を習得することはもちろん、実践の場における医療の知識も問われており、日々勉強しなければなりません。
元薬剤師の私が、医薬品のエキスパートである薬剤師のお仕事について今回は紹介します。
薬剤師の業務って?
薬剤師の代表的な仕事は、病院や薬局で薬を管理して、医師の処方せんに基づいて調剤することです。
実際に調剤の流れを見ていきましょう。
①受付
患者さんから処方せんを受付けます。
初めての方には、既往歴や副作用歴等を確認してお薬を安全に使用していただくために、アンケートなどにお答えいただくことが多いです。
また、この段階でジェネリック医薬品への変更について伺います。
※ジェネリック医薬品とは
新薬と主成分が同じ(添加物は異なる)で、新薬と同等の効果があると証明された医薬品です。
新薬の特許期間が満了となった後に、厚生労働省から承認がおりて製造・販売されます。
②処方せんの監査、薬歴の照合
医師が作成した処方せんの中身が間違っていないかを、処方履歴や患者さんの薬歴から確認します。
重複投与や投与禁忌があった場合、ドクターに疑義照会して処方を変更してもらいます。
③調剤
処方せんに従って、錠剤・散剤・水剤等を調剤していきます。
最近では、処方せんの情報と医薬品のバーコード情報を照合して調剤過誤を防止したり、散剤監査システムで秤量記録を残して、薬用量への適正を監査したりなど、調剤もオートメーション化が進んでいます。
また、患者様が服用しやすいようにお薬の一包化や粉砕等オーダーメイドの調剤も行います。
④最終監査
調剤されたお薬を別の薬剤師や監査システムで確認して、調剤過誤を未然に防ぎます。
薬の数量と形や色、錠剤の刻印も正確かどうか確認します。
また、薬歴と照らし合わせて処方内容の最終確認も行います。
⑤服薬指導・会計
監査が終わったお薬を、患者さんの疑問や相談に応じながら丁寧に指導します。
薬剤情報提供書やお薬手帳を交付して、患者さんに適正使用していただけるように情報提供していきます。
服薬についての説明を終えて、お薬の内容を確認いただいた後、お会計をします。
このような流れで調剤をしていきます。
患者数の多いクリニックの門前薬局では一日に取り扱う処方せん枚数は数百枚にも及びます。
現在では薬剤師の負担を減らすためにオートメーション化している薬局も増えてきており、もはや処方せんを待つだけが薬剤師の仕事では無くなってきています。
自宅に訪問する薬剤師
年々進んでいく高齢化に伴い、人生最後の療養場所として自宅を希望する人が増えてきました。
そのため、医療従事者が実際に自宅に訪問して治療を行う在宅医療のニーズが高まっています。
薬剤師もこの在宅医療に加わり、薬に関する悩みや・疑問にお答えすることで、患者さんやご家族の不安を解消することができます。
実際の訪問サービスについては以下の通りです。
①お薬のお届け
医師が往診に行き、処方せんをFAXなどで薬局に送付します。
これに基づいて調剤を行い、薬剤師がご自宅にお薬を届けます。
患者さんやご家族からすると、薬局に行く手間が省けるのがメリットと言えるでしょう。
②薬剤師の訪問時
ご自宅に訪問した際、薬剤師は様々なことをヒアリングします。
・薬の使用状況や効果、副作用などを確認
・患者さんの体調や生活状況を確認
・処方されたお薬についての説明
・次回の訪問日
医師、看護師、ケアマネジャー等に薬剤師が同行することもしばしばあります。
③訪問後
医師やケアマネジャーに薬剤師が報告します。
患者さんがより安心して在宅医療や介護サービスを受けることができるよう他職種が連携することが大切です。
国としても入院から在宅医療への移行を促進しています。
薬剤師が参画することで、医師の処方設計を支援でき、看護師や介護士がやむをえず薬に関わっている状況を改善でき、他の医療従事者の負担を減らすことも可能でしょう。
OTC医薬品の販売
薬局、ドラッグストアなどで処方せん無しで購入できるOTC医薬品ですが、要指導医薬品、第一類・第二類・第三類医薬品と種類があり、薬剤師はこれらを全て販売することが可能です。
薬剤師は患者さん自身の健康相談に乗り、適切なOTC医薬品を選定したり、場合によっては医師の診断を勧めたりする必要があります。
これからは、自分の健康は自分で守る「セルフメディケーション」の時代。
薬剤師も患者さんをトリアージして、適切なアドバイスをすることが重要です。
~~薬局のトリアージ~~
本来トリアージという言葉は、災害時や救急外来において患者さんの重症度を識別し、治療の優先度を決定するという意味で使われています。
薬局でのトリアージは薬局に来た患者さんの状態を観察、問診して症状を分析してあげることです。
分析した症状から疾患を予想して、以下の疾患分類に分け判断します。
①第1群 軽症と間違われることのある急性重症疾患
通常は病院を受診するような重い症状で発症するが、時に軽い症状で発症し、薬局に来る可能性がある疾患です。
脳、気道、心臓疾患、全身疾患などの急性重症疾患と判断した時は、薬剤師は病院の受診を勧奨します。
②第2群 薬局で対応できる軽症疾患
短期間で自然治癒する軽症疾患(多くは一週間程度)やずっと前から時々繰り返すいつもの症状などが対象です。
多くの場合は、適切なOTCを販売し、それでも良くならない場合に医師の受診を勧奨します。
③第3群 それ以外の疾患
重症疾患だが緊急ではない、または、軽症だけどOTCでは対応できない疾患などであり、トリアージ判断としては、早めの受診を推奨します。
さいごに…
このように薬剤師は医薬品についてだけでなく、在宅医療やトリアージのために疾患に関しての知識にも触れておかなくてはなりません。
薬剤師の業務は薬局や病院での勤務はもちろんですが、学校でのプールの水質チェックや違法ドラッグの講義のような学校薬剤師業務など、多岐にわたります。
これから薬剤師を目指す方は、調剤のお仕事はもちろん、他にも様々な業務があることを忘れずに考えましょう。
(文・薬剤師)