看護師は、医療現場において医師の診察の補助をし、医師の指示のもとで患者のケアをします。
血圧・体温などの測定、点滴、採血といった治療の補助など、身の回りのお世話も多く、献身的なイメージがあるため、女性の職業と思われている方も多いかもしれませんが、近年では男性看護師も増加してきています。
ハードワークではありますが、人の役に立つやりがいのある仕事です。
また、一旦退職しても再就職が可能な“ナースバンク”もありますので、女性に適した仕事といえます。
今回は、現役看護師の私が、看護師になる心構えについてお伝えします。
看護師の学習に入るまでの準備
看護師になるためには理系か文系かと迷われる方もいると思いますが、どちらも必要です。
例えば、薬液を調合したり、点滴の滴下速度を計算するには数学の知識が必須ですし、看護研究や保健統計の学習をするには数学的な基礎知識はかかせません。
また、身体の構造や機能を理解する解剖生理学や病気の理解には生物学の知識、薬の働く仕組みや身体の中で起こる代謝などの理解には科学の知識がベースになります。
一方、テキストを読み理解していくための読解力、カルテなどの記録を書き自分の行った看護をわかりやすくまとめていくための記述力など、国語の学習も重要です。
また、看護師の仕事は医療福祉政策をもとに展開されますので、社会の仕組みやそこで起こっている問題にも関心を示し理解しておく必要があります。
さらに、国際社会が進んでいる現在、看護をとりまく現状も同じように変化しているため、多国籍・多文化の患者に対する看護が行われることで英語の基礎的な能力も身につけていると役立つことが多いと思います。
健康な身体づくりには体育の授業も大切で、自立した生活のためには家庭科も重要になります。
そのためある教科に特化して学習するのではなく、いろいろな授業を大事にしてほしいと思います。
次に、様々な人々と関わる機会を作ってください。
クラブ活動に参加することで同じクラスの友人だけでなく、先輩後輩との交流を持つことができます。
また、ボランティア活動などの場では、異なった年代の方々との交流の機会をもつこともできます。
看護はいろいろな背景をもつ人々と関わる仕事ですので、多種多様な人と交流し、コミュニケーションすることが役に立ちます。
また、人々の成育歴や生活を理解して行う看護だからこそ幅広い教養をもつことは非常に役立ちます。
新聞を読んだり読書を通して自分の考えを深めたり、様々な芸術に触れる機会をもつこともよいと思います。
そして、重要なのは、自分自身の規則正しい生活を自分自身で管理することです。
朝一人で時間通りに起きる、毎日でなくても自分や家族のための食事を準備する、清潔な居住空間を整える、質のよい睡眠をとるといった日常生活を独力で送ることができるようにしておくことも大切です。
時間管理ができることも、短時間で多くの患者の看護を行う看護師には重要なことです。
段取りを考えながら、効率的に自分の時間を使えるようにしてください。
専門職である看護師に求められる資質と能力
(1)人に関心を持って関わることができ、相手の立場で考えられる
看護師は人との関わりを基本にし、患者が痛みや苦しみを抱えている時に、患者の立場に立って対応することが求められます。
痛みや苦しみは必ずしも身体だけでなく、精神的なものもあるため、患者の気持ちに寄り添い、話を聞いたり言葉をかけたり、コミュニケーションを図ることが必要になります。
相手の立場に立つということは、容易なことではありません。
自分自身に余裕がなかったり、悩みを抱えていたり、体調不良の時には自分本位に考えてしまいがちです。
また、相手によかれと思ってしたことが、必ずしも相手が望むことではない場合もあります。
そのため、相手の言葉にきちんと耳を傾け、気持ちを敏感に受け止められるような感受性をもっていることも大切です。
(2)広く深く学び続ける姿勢
看護は生まれたばかりの赤ちゃんから高齢者まで幅広い年齢層の人、またあらゆる健康状態の人が対象です。
病気になると、それまでに自分でできていた日常生活ができなくなることがあります。
そういう人達にその人らしい日常生活を営むことができるように、専門的な知識や技術を駆使して援助する実践活動が看護です。
時には死を目前にしている人や家族に対して、安らかな死を迎えられるように援助することもあります。
最近、在宅での看護がすすめられてきましたが、そこでは医療的な知識だけでなく、どのような社会制度や福祉制度が活用できるかという知識も必要になります。
幅広い関連諸分野の知識を活用しつつ、援助方法を科学的に考えるためにも、生涯にわたって意欲や関心をもち続けることが大切です。
(3)自分自身の健康管理
人々の健康のために働くには、まず自分自身の健康管理ができなければその責任を果たすことはできません。
看護師は、昼夜問わず24時間にわたってその生活を支える必要があり、看護チームの中でシフトを組み交代勤務を行っています。
8時間ずつ勤務を行う3交代制のほか、日勤8時間・夜勤16時間という2交代制などがあります。
いずれの勤務も休憩時間はあるものの、残業や2交代制の16時間の勤務を想像するだけで健康な心身が必要だということが分かると思います。
また、勤務中に座る時間はあまりなく、常に患者の看護のために活動を続け、患者の移動や入浴介助など十分な体力も必要になります。
患者の容態が急変することもあり、緊張感が続きます。
患者が亡くなる場面に立ち会うこともあるため、精神的にもつらい思いをすることもあります。
そういった意味でも、心身が健康で、自分自身の健康管理ができることが重要です。
看護師を目指す上で、看護の難しさに直面し自分には向いていないのではと思う人もいるかもしれませんが、苦しみだけでなく楽しさや嬉しさもあると思います。
自分自身の特徴をよく考えて、ゆっくり進路を決めていってください。
(文・看護師)