よくニュースでは、医療事故が起こるたびに医療バッシングが起こることを目にするのではないでしょうか。
その度に視聴者は日本の医療に対して不信感を抱き、「日本の医療は酷い」と声をあげることでしょう。
では、実際に日本の医療はアジアと比較した場合はどの程度なのでしょうか。
日本の医療に対する満足度
2010年のロイター通信が報じた、国民の医療制度に関する満足度調査では、日本人の医療満足度は15%であり先進国22か国の中でも最下位です。
しかし医療水準は客観的なデータを見てもほぼA評価です。
実際に、安倍政権では日本の医療を海外に輸出しようとしているし、中国人も日本に医療ツーリズムで訪れている人も増えてきています。
日本人ほど自国の医療に不信感を持っている国民はいないでしょう。
日本の医療の特徴3つ
日本の医療の特徴は「国民皆保険」「フリーアクセス」「自由開業・標榜制」の3つに分けられます。
国民皆保険制度
日本は1955年頃までは国民の3分の1が無保険者で、経済的な面などを理由に医療を受けることが出来ない人がいたりなど社会問題となっていました。
ところが1961年になり、国民皆保険制度が導入され、誰でも医療を平等に受けることが出来るようになりました。
今では国民誰でも保険証1枚あれば、どの医療機関でもかかれることが当然と思われるかもしれませんが、海外では必ずそうではなく先進国の中でも民間保険中心の国もあります。
日本の医療制度は2000年には世界保健機関(WHO)から総合的に見て世界1位と評価されています。
日本の国民皆保険は世界に誇れる制度と言っても過言ではありません。
しかし高齢化や医療技術の発達によって年々医療費は増加しているため、将来もこの制度を維持するのが難しい状況です。
私たち一人一人が健康への意識を高め、医療費を節約することが大切です。
フリーアクセス
患者様が自身でどの医療機関にかかるかを選択できる仕組みのことです。
海外では、自分が登録しているかかりつけ医を受診してからでないと、専門医療機関を受診出来ないという制度が導入されています。
日本でも大病院への受信志向があり非効率な医療と問題とされていました。
これを改善すべく今では紹介状なしで一定規模以上の病院にかかる際は選定療養費を徴収するようになっています。
自由開業・標榜制
日本では医師は自由に開業でき、専門科を標榜することができます。
この制度により複数の領域 を標榜する「なんでも屋」が増えすぎて何が専門かわからない開業医が増えています。
専門医ではない科目を診察して、薬剤を処方している例が多く、問題と思う方もいるのが現状です。
これら3つが日本の医療の特徴で、他のアジア諸国とは違った点です。
日本の医療制度は他国と比べてもかなり質の高い点も多いと思われます。
日本の医療サービス
外国人旅行者が日本に訪れた際、ケガや病気で入院した時に日本の医療サービスに驚くという声をよく聴きます。
日本の看護師は入院患者のベッドメイキングもすれば、食事の配膳、風呂上がりに患者の体を拭いてあげたりなどを当たり前にこなします。
一方、中国では看護師は入院患者に対して医療行為しか行わないため、患者の身の回りの事は食事も含めて毎日家族が付き添って世話をしてあげなければなりません。
また、中国の病院では病室が不足していることが慢性的にあり、患者のベッドすらままならない状況です。
当然ながら付き添いの家族が休む場所を確保するのも難しく、病棟内も衛生管理まで人手が行き届いているとは言い難いです
また、中国の方からすれば24時間いつでも看護師を呼ぶことのできるナースコールですら驚かれるそうです。
こうした日本の入院患者への看護サービスや病室内の環境は中国とはあまりに異なるため、中国人は驚愕することも多いです。
近年医療ツーリズムのため日本に来る中国人が多いのは、こうした違いが理由の1つだと言えるでしょう。
アジアの医療に日本医療が進出
日本では少子高齢化が進み、医療への需要が高まってきているため医療の高度化による医療費増加が進んでいます。
そのため、財政負担の点から医療費の抑制が課題となっています。
医療費の抑制に向けた診療報酬の改定、年々減少する医療従事者など、様々な面から病院の収益も悪化傾向にあります。
日本では、株式会社による病院の経営を認められていないため、企業は検体検給食・リネンサービス、医療サービス以外の管理業務などを総合的に請け負ったりなど、病院の周辺事業でサービスを提供しています。
周辺事業の分野ではオーガニックな事業拡大や新規参入は難しい状況にあります。
そうした中で、ICTやAI等を活用した新たな医療は医療の生産性の向上は重要なファクターといえるでしょう。
一方で海外において、中国の医療市場は年率21%(2005~2014年)、ASEANは13%と拡大が続いており、病院数も増加しています。
これらの国は日本とは異なり株式会社による病院経営が認められています。
日本の企業も、三菱商事がミャンマーで総合病院を設立計画したり、丸紅が中国で医薬品卸事業、伊藤商事はインドネシアのLippoグループと共同で医療・健康関連事業の展開を計画しています。
今後は、日本企業が医療分野への参入が活発になってくるかもしれません。
日本の医療はアジアのみならず世界でトップレベル
日本の医療は過去に医学雑誌ランセットにアジアのみならず世界一流レベルだと紹介されています。
医療品質レベルのランキングは、世界195か国・地域の中でも中国は60位の一方で日本は11位に選ばれるほどでした。
一般的に人口が多くなるほど高い質の医療サービスを維持することが難しくなると言われていますが、1億2000万人程の人口を抱える国が世界の11番目というのは非常に価値が高く、G7の中でもトップだと評価されています。
日本の医療が高いレベルである理由として、「国が国民の健康意識を高めるように政策を作っていること」が考えられます。
1978年から始まった、「国民健康づくり対策」は予防を重点とした政策を次々と出しています。
全面的な健康サービスを受けられる公立の健康センターが日本各地に存在しており、大学病院や公立の基幹病院などと連携を図っています。
世界でも「医療設備・科学技術レベルが高い」と評され、重粒子線がん治療設備はドイツのシーメンスと日本の三菱しか製造が出来ないと言われています。
また、陽子線治療装置の世界的に主要なメーカーは住友と三菱で、日本の技術力は医療の面でも先進的であると言えます。
日本は明治時代から西洋医学の人材を育成しており、20世紀の初めにはすでに西洋医学の医師が1万人近くいたそうで現代医学の教育システムを完備してきたからこそ、アジアのみならず世界でも医療大国になったのではないでしょうか。
ところが国民が日本の医療が劣っていると感じるのは一体なぜでしょうか。
おそらく患者が医療従事者や医療機関に対して医療不信を抱くからです。
これも医療訴訟問題をメディア等で取り上げて医療不信を煽っているのも原因の1つでしょう。
救命のために必要なことをして失敗した医師に非難が浴びされれば医師も積極的な治療が出来なくなってしまいます。
メディアに限らず国民も協力して、患者と医師の信頼関係を改善することが出来るのであれば、世界と比べても優れている日本の医療を、さらに良いものに引き上げることができるのではないでしょうか。