治験コーディネーターについて

「人の役に立つ仕事がしたい」と思っていても、実際どんな職種や職業があるのか、資格は必要なのか、どういった人に向いているのか、将来性はどうなのかなど考えることはたくさんあると思います。
人生の中で大きな選択となる仕事は、自分自身を高めることができたり地位や収入が上がることなど、やりがいを感じたいと思う人も多いはず。

現在、国を挙げて人材育成を推進している“注目職種”があります。
それは「治験コーディネーター」(Clinical Research Coordinatorの略表記でCRC)と呼ばれる仕事です。
多くの患者さんが待ち望んでいる新しい薬を、より早く世の中に送り出すお手伝いをする仕事で、目の前にいる患者さんだけでなく何千、何万人単位の人の役に立てる仕事です。

近年の医薬品業界の動向

近年、日本をはじめとする先進国・新興国では急速な高齢化により慢性疾患や加齢性の疾患が増加しています。発展途上国においても、感染症や栄養失調といった従来からある疾患に代わって、糖尿病や高血圧症をはじめとした生活習慣病が急激に増加しています。
病気を治すために治療の早い段階から医薬品が使われているだけでなく、病気の進行を遅らせる目的や合併症を防ぐ目的など、あらゆる場面で医薬品は使用されています。
そのため医薬品の需要はどんどん拡大し続けると考えられており、特に循環器疾患やがん等の新薬の需要は今後、更に加速していくと予想されます。
欧州製薬団体連合会(EFPIA)によると1998年から2012年までの間に世界で創出された新薬に占める日本企業の構成比は14.4%となっています。
新薬の開発には非常に高度な技術が必要とされるため、創薬できる国は世界でもごくわずかです。そのなかで日本は、アメリカ、スイスに次ぐ新薬創出国で世界第3位の開発品目数を誇っています。日本で開発された新薬は、国内のみならず諸外国においても数多く使用されており、世界中の人々の健康や医療に貢献しています。
このように日本では新薬の開発が盛んに行われており、年間150件程度の治験が計画されています。
新薬開発の需要に伴って治験の数は年々増えており、今後も増加傾向にあると予想されます。
治験数の増加に伴って、治験において重要な役割を担う「治験コーディネーター」の仕事は今後より一層需要が高まっていくと考えられます。

治験コーディネーターってどんな仕事?

新しい薬が開発されるには、まず試験管を用いた実験を行った後に動物実験を実施し、病気に効果があり人に使用しても安全と考えられる薬の候補が選ばれます。この薬の候補を健康な人や患者さんに使用してデータを収集し、有効性や安全性、使用方法などを確認する臨床試験を「治験」といいます。
治験は第I相から第III相までの3段階で行われます。第Ⅰ相は少数の健康な成人男性を対象に主に副作用などの安全性を試す試験です。第Ⅱ相は少数の対象疾患の患者さんを対象に、第Ⅲ相は多数の対象疾患の患者さんを対象に行われ、第Ⅱ相と第Ⅲ相は主に効果や効能について調べられます。
得られたデータが国の審査に通ると「薬」として承認されます。

 

治験コーディネーターは医療関係者や治験参加者、製薬企業などの間に立ち、治験がスムーズに進行できるようさまざまな業務を行う仕事です。
治験参加者である患者さんやその家族が納得し、安心して治験に参加する事が出来るよう、患者さんの自由な意思で治療を決められるよう必要な情報の提供を行うなどの患者さんのケアや、 治験を行う医師や医療現場の支援など治験に関わる業務全般のサポートを行います。治験に参加している患者さんの治験期間中の疑問・不安等に対する相談窓口の役目も担います。
そして医療行為や医学的判断を伴わない業務を支援して、治験がスムーズに行われるよう調整していきます。

具体的な仕事内容

・治験業務フローの作成
・関連部門の調整
・治験参加者への対応(同意説明・相談受付など)
・治験担当医の補助
・治験データの収集と書類等の管理
・製薬会社など依頼企業への報告
・スケジュール管理
など、治験全体に関わる仕事をしており、治験を行う上で重要なポジションとなります。

向いているのはどんな人?

治験をサポートする上で重要なことは、治験が正しくスムーズに行われるようにすることです。
医師や医療スタッフ、患者さんなど多くの人と関わるため、コミュニケーション能力の高さが求められます。
また、質の高い治験を進行するためには、様々な部門との連携が不可欠で、快く治験に協力してもらえるよう、チームによるサポート体制を構築する強いリーダーシップやスケジュールの管理能力が求められます。
治験参加者である患者さんが安心して治験に臨めるよう誠実に対応することも大切です。
さらに、薬学や医療に対する知識が必要になるため、薬や疾患、治験の進行スケジュールなどについて常に勉強し、新しい知識や情報を取り入れる探求心も重要となります。

どうやったらなれるの?

治験を実施している医療機関に勤務するか、治験コーディネーター業務を行っている会社(総称してSMOといいます)に就職するかの大きく2通りに分けられます。
病院では、看護師や薬剤師、臨床検査技師などとして所属している人が治験コーディネーターになったり、仕事を兼任しているケースも多いため、医療機関に所属していない人が治験コーディネーターを目指すには、SMOへの就職をするのが一般的です。

治験コーディネーターになるために特別な資格は求められませんが、医学や薬学などの知識が必要とされることから、看護師や薬剤師、臨床検査技師などの医療系資格や臨床経験がある人は即戦力して優遇されることが多いようです。
また、治験コーディネーターとしての公的な資格はありませんが関連学会や業界団体が実施している資格がいくつかあります。
最も取得者が多いのは2005年に始まった日本SMO協会が実施する「日本SMO協会公認CRC」で、これらの資格は働くうえで必須のものではありませんが、取得すれば転職の際などに有利となる場合があります。

 

医療系の資格や臨床経験がない人が治験コーディネーターを目指す場合には、治験の進行状況を確認する臨床研究モニター(CRA)として経験を積むという方法もあります。
臨床研究モニターの業務内容は治験コーディネーターとは異なりますが、治験をサポートするという意味においては共通点があるため、臨床研究モニターの経験者であれば治験コーディネーターとして採用される可能性も高くなるようです。

学生の人が治験コーディネーターを目指すなら、医学、医療技術学、看護学、薬学などの医療系の大学や短大、専門学校を選ぶと良いでしょう。

治験コーディネーターのあれこれ

◆人数◆

全国に約5000人いるといわれています。
治験コーディネーターの認定資格はないため看護師などが仕事を兼任している場合もあり、実際のところ正確な人数を把握出来ていないのが実状です。
ここ約10年で活躍が飛躍的になってきた職業であるため、今後さらに増えて行くと予想されます。

 

◆難易度◆
治験コーディネーターの難易度・合格率は地域や認定団体、就職先の企業によって変動していて、年齢によっても異なっています。
最も合格率が高いのは、20代後半から30代前半の保健師となっており、平均すると書類の段階で50%、面接の段階で40%くらいの合格率となります。
全体的には合格する人は応募者の5〜10人に1人と言われています。

 

◆年収◆
年収は所属先や条件によって左右されますが未経験者の場合は300~400万円ほどのことが多いようです。
前職によっても金額が異なり、最も高額なのは薬剤師で、それに看護師、臨床検査技師、准看護師と管理栄養士が続きます。
経験者の場合は400~500万円が最も多く、管理職の経験があれば、さらに年収が増えることもあります。
実績を積むことで給料は徐々にアップし、治験業務全体を一人で担当できるようになれば、年収1000万円を超える人もいるようです。

 

◆将来性◆
新薬が開発される際に、治験は必ず必要とされます。
新薬の開発が盛んな日本では現在、年間多くの治験が計画されており、この傾向は今後も続くと予想されます。
また国が治験を活性化させるための方針を打ち出したことも追い風となっています。
厚生労働省と文部科学省は画期的な新薬開発を促し、患者さんに対して迅速に提供するため、2003年に「全国治験活性化3ヵ年計画」、2007年に「新たな治験活性化5ヵ年計画」、2012年に「臨床研究・治験活性化5ヵ年計画 2012」を策定しました。
これは治験手続きの効率化や人材確保、コストの適正化、実施体制の整備、開発が進みにくい分野への取組みの強化などで、この計画では治験コーディネーターの重要性についても触れられており、人材確保に加え人材育成も目標のひとつとされています。
「臨床研究・治験活性化5ヵ年計画 2012」では「臨床研究コーディネーター」と名称を変更し、今後新たに3000人を育成することが掲げられています。
国によるこうした取り組みからも、今後、治験コーディネーターの需要は増大していくものと予想されます。

治験コーディネーターはこれからさらに需要が拡大していくことが期待できる職業です。
良い薬を待ち望む患者さんに1日でも早く薬が届けられるように、新薬の導入に向けて医療現場で治験業務のサポートをする「縁の下の力持ち」として多くの人に貢献できるとともに、未来の医療に大変重要な役割を果たしています。

生活向上WEBで掲載している情報は、情報伝達目的で掲載されたものであり、治療の正確性や安全性を保証するものではありません。 このHPの情報によって起こったいかなる結果に対しても一切責任は負えませんことをお断りいたします。
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