月経が近づいてくると気持ちが憂鬱・イライラ・お腹が張るなど何かしらの不快な症状が出現することがあるのではないでしょうか?
また、月経が始まるとお腹の痛みに悩まされる方もたくさんいると思います。
実際74%の女性が月経前・月経中に身体や心の不調を抱えており、そのうち2~10%が日常生活に支障をきたしているといわれています。
ここでは月経前症候群について知っていただき、「生理だからしようがない」と我慢せず、時には薬の力を借りて上手に付き合っていただきたいと思います。
月経前症候群(PMS)
PMS(Premenstrual Syndrome)
月経が始まる3~10日の間に続く精神的・身体的症状で、月経が始まると消失・軽減するものです。
症状
症状が表れるタイミングは月経2週間前から、または2~3日前に集中して表れる場合もあり、個人によって大きく違います。
身体的症状 | 精神的症状 |
頭痛 | イライラする |
肩こり | 憂鬱な気分になる |
疲れ・だるさ | 泣きたくなる |
吐き気 | 落ち着かない |
下腹部の痛み | 眠れない |
乳房の痛み・張り | 孤独感・むなしさを感じる |
肌荒れ | 集中力・判断力の低下 |
むくみなど | 不安感など |
*症状・程度は個人差があります。
40歳~更年期に多くみられ、無排卵性月経では起こりません。
はっきりとした原因不明です。
排卵から月経までエストロゲンとプロゲステロンが多く分泌されます。
この時期の後半にホルモンが急激に低下することで、脳内の神経伝達物質の異常を引き起こすことが原因と考えられています。
この現象はストレスの影響を受けるため女性ホルモン変動だけではなく、他の要因からも起こるといわれています。
月経前不快気分障害(PMDD)
PMDD(Premenstrual Dysphoric Disorder)
月経周期における発症時期はPMSと同じですが、焦燥感・不安感・脅迫感・自己喪失感・涙もろさなど精神症状が強く学業・仕事・家庭生活上あるいは人間関係・日常生活に支障をきたすものをいいます。
PMDDはPMSの重症になったものです。
PMS・PMDDの治療
社会生活に影響があるほどのPMS・PMDDは治療対象となります。
薬物療法
比較的軽症で自覚があり、社会生活上QOLに影響がなければ対症療法としてEP配合剤などのホルモン剤・鎮痛薬安定剤・漢方薬などで対応します。
症状が中等度以上の場合、軽い抗うつ剤が処方されることがあります。
*EP配合剤⇒エストロゲン・プロゲステロンの2種類の女性ホルモンを配合した飲み薬で、服用中は排卵を休めることで子宮内膜(これがはがれるのが月経)を薄い状態にします。
経血量を減らすだけではなく、子宮内膜での痛み物質の産生を抑制します。
排卵を休めることでPMS・PMDDの症状が起きにくくなります。
カウンセリング(認知療法)
記録をつけて、病気の理解と頻度・発症時期・重症度を認識します。
*認知療法⇒ゆがんだ認知を修正することで気持ちを楽にしたり行動をコントロールする治療法
生活指導
1.健康的なライフスタイル⇒規則正しい生活、質の良い睡眠、バランスの良い食事
2.ストレス発散⇒適度な運動・リラクゼーション
3.その他⇒禁煙、アルコール・カフェインを控える
PMS自体があまり知られていない中、PMSとPMDDの症状や違いが明確になってきたのはごく最近のことです。
つらい症状に苦しみながら「病気ではないから我慢するべき」「精神症状だから心療内科や精神科に行くべき」など周囲の理解を得られない状況に苦しんでいる方は多いようです。
PMS・PMDDは治療の対象となる疾患でホルモン剤や抗うつ剤などを含むさまざまな治療法があります。
月経周期における女性ホルモンの変動が関与している可能性がありますので、婦人科で月経に関するトラブルのひとつとして相談してみてください。
参考文献 病気がみえる vol.9: 婦人科・乳腺外科