ある日突然、「子宮筋腫があります」と診断され驚いた方もいるのではないでしょうか。
子宮筋腫は良性の腫瘍で筋腫そのものが直接命に関わることはなく、ほとんどの方は無症状で何の影響も受けることなく過ごしていきます。
診断された場合、このまま様子を見るか、治療を受けるか、治療を受けるとしたらどんな治療がいいのか医師の意見を聞いて選択することができますが、「説明されたがよくわからない」「もっと他の選択肢があるのでは」と思う場合があります。
ここでは子宮筋腫とはどんなものかを知っていただき、治療を選択する際の参考になればと思います。
子宮筋腫とは
子宮の形は小ぶりの洋ナシをさかさまにしたイメージで、外側から、ショウ膜(子宮を包む膜)・子宮筋層(筋肉)・子宮内膜(着床する膜)の3層から成り立っています。
上2/3を子宮体部、下1/3を子宮頸部といいます。
前に膀胱、後ろに直腸があります。
子宮の主な働き
・精子を膣から卵管へと運ぶ。
・体内で胎児を育てるための部屋。
・子宮頸部は、子宮内に外界から細菌が侵入しないよう栓になっている。
特徴
・子宮筋腫は子宮の筋肉にできるコブのような塊でガンではない。
・30歳以上の女性の20~30%にみられ、発生・増大に女性ホルモンが関与するエストロゲン依存性疾患。
・ほとんどは子宮体部に発生(95%)し、多発することが多い(60~70%)。
・悪性化することはまれ(0.5%以下)である。
・閉経後に小さくなる。
子宮筋腫の分類
子宮筋腫は、筋腫の発育方向によって3つに分類されます。
粘膜下筋腫
頻度:3~10%。
定義:筋腫が子宮内膜直下に発生し、子宮内にむけて発育するもの。
特徴:もっとも症状が強い。
筋層内筋腫
頻度:約70%。
定義:筋腫が子宮筋層内に発生・発育するもの。
特徴:3つの中で最も多く、多発しやすい。
ショウ膜下筋腫
頻度:10%~20%。
定義:筋腫が子宮ショウ膜の直下に発生し子宮外に向けて発育するもの。
特徴:無症状のことが多いが、茎捻転(けいねんてん)を起こすと急性腹症をきたす。
3大症状
過多月経・月経困難症・不妊。
周辺臓器の圧迫による症状
腰痛・頻尿・便秘(膀胱や直腸を圧迫)。
その他
過多月経による鉄欠乏性貧血・下腹部痛・不正出血・下腹部のしこり。
合併症
子宮筋腫の約20%に子宮内膜症が、また子宮腺筋症も高頻度に合併している。
検査
超音波検査・MRI・子宮鏡などで診断される。

治療
治療と経過観察の判断は、過多月経による貧血の程度、臓器の圧迫による症状、痛み、大きさと部位、妊娠を希望するかなどを総合して行われます。
経過観察
明らかに良性で、無症状、妊娠の希望がない場合、3~6ヶ月ごとに検診を受ける。
薬物療法
GnRHアゴニスト(偽閉経療法)卵巣からのエストロゲン分泌を低下させ閉経状態にし筋腫を縮小させる。
手術療法
筋腫核出術⇒筋腫のみ摘出 妊娠はできるが再発の可能性がある。
子宮全摘術⇒根治療法 妊娠できないが再発もしない。
開腹手術・腹腔鏡手術・子宮鏡手術がある。
偽閉経療法で筋腫を小さくしてから手術することもある。
子宮動脈塞栓術(UAE)
子宮筋腫は、子宮動脈から栄養補給されていると考えられており、その血管を遮断して筋腫を壊死・縮小させ症状の緩和を図る。
しかし根治はできない(再発の可能性がある)。
逃げ込み療法
閉経以降、筋腫は大きくならない特徴を考慮し、更年期にさしかかった方に対して行われる治療法で薬物療法(GnRHアゴニスト)をしながら閉経を待つ。
しかし、閉経時期が予測不能なうえ、薬物療法を続けられるのは6ヶ月までで薬をやめると筋腫が再び大きくなってしまう可能性がある。
また、長期に使うと骨粗しょう症などの副作用があり、さらに高価であるという問題点がある。
子宮筋腫になりやすい人
・初潮が早い⇒エストロゲンにさらされている期間が長い。
・肥満⇒牛肉などの動物性脂肪の多い食事を好む人は要注意。
・出産したことがない⇒毎月月経が起こり定期的にエストロゲンが分泌されている。
・アルコールが好き⇒特にビールで子宮筋腫が増加するのではないかという報告がある。
タバコを吸う人は子宮筋腫が発生する確率が低いようです。
タバコの有害成分は卵巣内の卵子の数を減らすといわれ、喫煙者は閉経も早い傾向にあります。しかし、卵巣から分泌されるエストロゲンの量が減るためではないようで、子宮筋腫の人がタバコを吸ったから筋腫が良くなったという報告はありません。
同様に肥満の人がダイエットをすれば子宮筋腫が改善するということもありません。
子宮筋腫は珍しい病気ではなく、直接命に関わるものでもありません。
しかし、放置することで貧血が進行したり、内膜症や腺筋症、不妊を合併する可能性があり、「下腹部がふくらんできた」「固いしこりがある」「月経量が増えた」「子供ができない」など気になる症状があれば、婦人科で診察を受けることをおすすめします。
詳しく検査をすることで安心につながり、同時に治療方針が決まれば病気への漠然とした不安が一掃されるはずです。
医師と相談しながら自分に合った納得のいく治療を選択していただきたいと思います。