医学的に、女性の糖尿病は男性の糖尿病と異なるものではありません。
ただし男性に比べて女性は健診を受ける機会が少ないことで発見が遅れやすいことがあります。
また、女性が糖尿病になりやすくなる40歳以降は更年期と重なることが多く、そのわずかな糖尿病の自覚症状を更年期が原因と思い込むこともあります。
早期に発見、予防できるように女性ならではの糖尿病の特徴を知っていただき、ご自身のメンテナンスのきっかけにしてください。
糖尿病とは?
インスリンが分泌されなくなる=インスリン分泌障害
インスリンは分泌されるが効きにくくなる=インスリン抵抗性亢進(こうしん)
などインスリンの作用不足によって、細胞に糖が正常に取り込めなくなり慢性の高血糖になる疾患です。
正常な場合
①すい臓からインスリンが分泌される。
②インスリンの作用により細胞が糖を取り込む。
インスリン分泌障害の場合
①すい臓からのインスリン分泌障害が引き起こされる。
②インスリンがないため細胞は糖をとりこめない。
インスリン抵抗性亢進の場合
①インスリンは分泌されている。
②インスリンが効きにくくなっているため細胞は糖を取り込みにくい。
(糖を取り込むのに大量のインスリンが必要となる)
症状
多尿・多飲・口渇・体重減少などの自覚症状
飛蚊症・足のしびれなどの合併症を疑われる症状
糖尿病の主要な病型
糖尿病の主要な病型はⅠ型とⅡ型に分けられます。
Ⅰ型糖尿病
割合 | 5% |
特徴 | 小児~青年期 |
成因 | 自己免疫・遺伝因子など |
家族歴 | 少ない |
インスリン分泌障害 | 高度 |
インスリン抵抗性 | なし |
糖代謝異常の進行 | 改善することなく進行することが多い |
症状 | 急激に症状が出現 |
インスリンの必要性 | 最終的には依存症となる |
Ⅱ型糖尿病
割合 | 95% |
特徴 | 主に中高年 |
成因 | 遺伝因子・生活習慣 |
家族歴 | 高頻度にあり |
インスリン分泌障害 | 軽~中等度 |
インスリン抵抗性 | あり |
糖代謝異常の進行 | 境界領域まで改善することもある |
症状 | 初期は無症状だが進行するにつれ症状が出現 |
インスリンの必要性 | 非依存性が多いが重症化すれば依存性となる |
女性ホルモンとインスリンの関係
月経周期とインスリンの関係
女性ホルモンであるエストロゲンは血圧やコレステロールを調整します。
また、血糖値の上昇を抑制し、インスリンの効果を高める働き(インスリン感受性)があります。
逆に、排卵後に分泌される黄体ホルモン(プロゲステロン)はインスリンの効きを悪くし血糖値を上昇させるといわれています。
月経に関連した症状(月経前症候群・月経困難症)の有無や程度には個人差がありますが、症状によって強いストレスを感じ食べ物の好みが変化したり食べる量が増えたりすることや運動量が少なくなるなどの変化が起きることがあります。
ホルモンだけではなく身体症状から影響を受ける食生活や活動量の変化、精神的なストレスなどが血糖値の変動に影響を及ぼしていることも理解が必要です。
インスリン抵抗性が増える妊娠中の糖代謝
妊娠中は、胎盤ホルモンの影響によりインスリン抵抗性が増し、妊娠後期(特に20週以降)に糖代謝が悪化する傾向にあります。
インスリン抵抗性の増大に対してインスリン分泌の代償ができないと妊娠中に糖代謝異常(妊娠糖尿病)の発症や、糖尿病の悪化がみられます。
妊娠糖尿病と糖尿病合併妊娠
・妊娠中に発見され、糖尿病に至らないが糖代謝異常を認める場合を妊娠糖尿病といいます。
・妊娠中に発見され、糖尿病の診断基準を満たす場合は明らかな糖尿病とされます。
・妊娠前から存在するものを糖尿病合併妊娠といいます。
妊娠糖尿病になりやすい人
・家族に糖尿病の人がいる
・尿糖持続因子
・肥満
・過度の体重増加
・巨大児出産の既往がある
・35歳以上
妊娠糖尿病は糖尿病に至らない軽い糖代謝異常でも胎児の過剰発育が起こりやすく周産期のリスクが高くなります。
母体の糖代謝異常が出産後いったん改善しても、一定期間後に糖尿病を発症する危険があります。
閉経によるホルモン変化が糖尿病をまねく
更年期に入ってエストロゲンの分泌が減少するとインスリンが効きづらくなり(インスリン抵抗性)、血糖値が上昇して糖尿病のリスクが高まります。
エストロゲンには「内臓脂肪」を代謝させて脂肪をつきづらくする働きがあります。
中年にさしかかると男女問わず代謝が落ちるため脂肪がつきやすくなりますが、エストロゲンの分泌が減少する更年期以降の女性は特に「内臓脂肪」がつきやすくなります。
閉経前の女性はエストロゲンの作用で「内臓脂肪」より「皮下脂肪」がつきやすい傾向にありますが、更年期以降は「皮下脂肪」より「内臓脂肪」がつきやすくなります。
インスリン抵抗性は内臓脂肪に比例し、筋肉量に反比例します。
肥満かつ筋肉量の少ない女性ほど血糖値が上昇しやすくなります。
内臓脂肪は皮下脂肪より運動によって落としやすい特徴があります。
更年期にさしかかったら日常生活の中に適度な運動を取り入れ、余分な内臓脂肪を燃やしていきましょう。
家庭をもっている女性は、家族に合わせる生活スタイルを余儀なくされています。
その結果、食事時間が不規則になり家族の帰宅時間が遅ければ睡眠不足にもなります。
働く女性は仕事のストレスや家事に追われ、ついつい自分のことは後回しにしてしまいがちです。
女性は男性と違っていくつかのことを並行して行うことが得意と言われているのである程度のことはこなしてしまいますが、それは健康があってのことです。
体重のコントロール・食生活の見直し・適度な運動・睡眠不足とストレスの解消、また定期的な健診を受けて糖尿病を予防していきましょう。
参考文献『病気がみえるvol.8』(メディックメディア)
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