終末期を迎える患者様からすれば、「最期の日は大好きだった我が家で迎えたい」「愛する家族に看取られたい」と思う方は多くいるでしょう。
そんな思いを叶える1つの方法に在宅医療があります。
本日は在宅医療の基本について知って頂きたいと思います。
在宅医療とは
在宅医療は、通院が困難な高齢者や障害者のためのものです。
自宅にいてご家族との交流があり、住み慣れた場所にいることの快適さや安心感をそのままにして医療を行うという患者様のQOLを第一にした医療です。
在宅医療は大きく分けて「訪問診療」と「住診」に分けられます。
訪問診療:通院が困難な患者様の自宅に医師が定期的に訪問する。
住診:具合が悪くなった際に医師が自宅まで訪問する。
訪問診療はクリニックによってまちまちですが、基本的に月2回(隔週)行います。
訪問診療は病気の治療だけが目的ではなく、寝たきり、転倒、床ずれなどの予防や、栄養状態などもチェックします。
【在宅医療の対象患者】
在宅医療は通院不能な患者への定期的診療が目的です。
そのため、対象患者は以下の3つの群になります。
①寝たきりの患者様のような日常生活の行動性の低下した高齢者
②パーキンソン病のような神経難病患者や外傷によって後遺症が残った患者様
③悪性疾患の末期患者様
この3つの群の患者様は病院で治療している患者様よりは比較的病状が安定しているものの、患者様も虚弱で疾患としても重いものが多いです。
そのため、24時間変化に対応できる体制が望ましいです。
がんの在宅医療では、上記の訪問診療と往診を組み合わせ専門的かつ本格的な「疼痛管理」「緩和ケア」などが受けられます。
多職種連携
在宅医療は医師、歯科医師、訪問看護師、薬剤師、栄養士、理学療法士、ケアマネジャー、ホームヘルパーなど多職種が連携して患者様の治療やケアを行っていきます。
では、それぞれの役割について確認していきます。
医師
定期的に在宅患者様の状態を診て、診断や治療を行っていきます。
在宅医療にかかわる医療従事者に適切な指示を出す中心的な役割を持ちます。
歯科医師
患者様の口腔ケアの中心的な役割を担います。
口腔内をきれいに保つことは嚥下障害や誤嚥性肺炎の予防にもなります。
訪問看護師
在宅患者様の様々なケアを実際行っていきます。
薬剤師
患者様にお薬を配達し、その場で服用指導、残薬確認を行います。
薬の飲み合わせや副作用の問題がないかなどをチェックし、場合によっては医師に処方提案を行なっていきます。
ケアマネジャー
患者様が介護保険を利用する場合は、ケアマネジャーが最適なケアプランを作成し、他の介護サービス事業者との連絡や調整などを行います。
ホームヘルパー
食事、入浴、排せつなどの身体介助や炊事、掃除、洗濯などの家事援助を行います。
在宅を求める患者様にとって欠かせない存在です。
このように1人の患者様に対して、在宅医療は多くの医療関係者が情報を共有しながら連携を取っていくことが重要です。
在宅医療の重要性
在宅医療が重要な理由の1つに高齢化があります。
高齢者の数が増える度に介護を要する人も増えていきます。
また、日本の医療水準は高く、寝たきりの障碍者が生存する期間も長いです。
実際に在宅医療を求める声も多く、厚生労働省の「終末期医療に関する調査」によると「自宅で最期まで療養したい」「自宅で療養して、必要になれば医療機関等を利用したい」と回答した割合は60%を越えています。
要介護認定されても「自宅で介護してほしい」と回答した割合は40%以上であり、年々となるべく自宅で長く過ごしたいというニーズは高まっています。
しかしながら、日本は核家族が多いといわれ高齢者のうち夫婦のみか、1人で生活する人がほぼ半数と言われています。
介護を受ける者と介護をする者の両者が高齢化し、自然と在宅医療のニーズは高まります。
では実際に在宅医療は普及しているのでしょうか?
【在宅医療の数は伸び悩んでいる?】
2011年の厚生労働省のデータでは訪問診療を実施している医療機関は「病院28%」「診療所20%」と病院と診療所の全体数と比べても少ない割合です。
この原因で考えられるのは、国の制度にもあるでしょう。
在宅医療が可能な施設として登録されるには、
①24時間往診可能な医師・看護師を配置すること
②在宅患者の緊急受け入れが出来ること
③ケアマネージャーと連携できる体制にあること
④年1回、在宅の看取り数を報告すること
などが要件にあります。
特に24時間体制というのは医療従事者からすればかなり負担です。
在宅医療を行う医師は「しんどい」と感じていることでしょう。
在宅医療を広めるために、国としては「往診・訪問診療料」「各種指導管理料」「検査・注射・処置料」など診療報酬を年々改定したりなど既に策を講じています。
最後に…
団塊の世代が後期高齢者に突入するといわれる2025年問題。
高齢化が進むに伴い在宅医療のニーズは高まってきています。
このような状況の中、今後は患者様が実際に在宅医療に対して正しい知識を持つことや、医療従事者が理念・考え方・取り組み方などを発信し、質の高い医療サービスを提供できることを示す必要があります。
人生の最後を出来る限り住み慣れた場所で過ごしたいと考える方が多い中、在宅医療に関わる方はその考えを理解してご家族や患者様との信頼関係を築きあげることが重要だと言えるでしょう。